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【書評】法律に強い税理士になる

2020-11-02

書籍名「法律に強い税理士になる」 著者「木山泰嗣」 出版社「大蔵財務協会」

税理士にとって「リーガルマインド」即ち、法律的な考え方(法的思考力)は重要である。
その考え方の思考技術が「法的三段論法」である。
「法的三段論法」とは、裁判官が判決を下すとき、弁護士が税務訴訟をするときなどには必ずたどる思考プロセスであり、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)は必ず身につけている思考技術とされる。
「法的三段論法」の思考プロセスは次の流れで展開される。
①「法解釈」(法規)に論理則をあてはめ、(法規範)を定立する。
②「事実認定」(証拠)に経験則をあてはめ、(事実)を認定する。
③「結論」定立された(法規範)に、認定された(事実)を(あてはめ)る。

まず『大前提』とされる「法解釈」であるが、簡単に言うと法律の条文の解釈である。
その解釈には「文理解釈」、「論理解釈」、「類推解釈」などいくつかの手法があり、過去の判例が基準とされる場合もある。それらの手法により裁判所が法解釈を行うが、解釈の限界を超える判断は「法律をつくる」のと同じ効果となり、立法権の侵害となるため駄目だとされる。

次に行うのが『小前提』とされ、証拠を基に(事実)を認定する作業、「事実認定」のプロセスである。『大前提』と『小前提』で最も異なる部分は、「弁論主義」の適用があるという点であり、
「法的三段論法」のプロセスで「弁論主義」が適用されるのはこの『小前提』だけである。
「弁論主義」とは、当事者(原告・被告)が自分で主張や立証をしないと、
判決では扱ってもらえないという原則である。
主張は「主張責任」、立証は「立証責任」として義務付けられる。
「主張責任」とは当事者から主張がなければ裁判所はその主張を判決の基礎とはしないということ、「立証責任」とは当事者が自らに有利な証拠を提出しなければ裁判所は判決の基礎とはしないということである。

この弁論主義という考え方に基づいて、主張のための訴訟資料や、立証のための証拠資料の準備等の作業を当事者である原告・被告が行い、事実を認定する。このプロセスを経て「結論」を導き出すという思考技術が「法的三段論法」である。
この「法的三段論法」は、税理士にも必要な思考技術だと筆者は考える。例えば、税務調査立会の際には、「法的三段論法」と「立証責任」を意識することが重要である。税務署が追徴課税を課すならば、その「立証責任」は税務署にある。指摘事項があった際にすぐ修正に応じるのではなく、税務署に対して、その指摘事項が「課税要件事実」のすべて充足していることを「立証」するように要求しなければばらない。そしてその「立証」が、正しいかどうか論理的に判断するには「法的三段論法」のプロセスで考えることが重要である。また不服申し立て等を行う場合の異議申し立てのために提出する書面も「法解釈による主張」と「事実認定の主張」とを分けて主張するような論理的で説得力のある文章構成であることが重要であり、そのためには「法的三段論法」の考え方は不可欠である。
法曹三者だけでなく、法律に携わる職業の一つである税理士にも当然、この「法的三段論法」、そして「リーガルマインド」は、様々な場面で必要とされる。

桑村